平安時代と室町時代、どっちが古い ~高校生の歴史的教養
この出来事は何時代のこと?
授業で、「これ、何時代のこと?」と聞きます。
古代とか近世とかといった立派な?時代区分でもなく、
もちろん「天保」とか「享保」といった年号のことでもなく、
ごく普通の「平成」とか「江戸」とか「鎌倉」といった、あの小学校で習ったあの時代区分が。
しかし、ある時期、ふと気がついたのです。
この小学生的な時代区分すら定着していないのではないかと。
授業開きのとき、黒板に番号を書いて
この小学生的な時代区分すら定着していないのではないかと。
授業開きのとき、黒板に番号を書いて
「はい、古い順に時代の名前を言ってみて?」と質問したところ、全然できない。
「明治時代の前は?」「…」。
「鎌倉時代と奈良時代、どっちが古い?」「…」
といった具合でした。
どうですか、まわりの高校生たちに聞いてみては。
「アホにしてんのか」という高校生がいる一方、
「アホにしてんのか」という高校生がいる一方、
まったくできないという生徒もかなりいると思います。
時代と特徴・人物と結びつけるのはもっときつい
最後にいた学校は、公立高校は、偏差値的には真ん中くらいというところでした。それでも、縄文から平成まで、しっかりいえる生徒はクラスの半数はいなかったと思います。
さらに、それぞれの時代の特徴を結びつけるとなると、もっと厳しくなります。
「藤原氏などの貴族が全盛だった時代は?」なんてすぐできると思いますよね。それができないんです。
「関東に武士の政権ができた時代は」なんかはかなり難問です。
小学校で出てくる人名を時代の中にはめ込むとなると悲惨です。
「聖武天皇は何時代?」「じゃ、紫式部は?」という質問の答えを出すのに時間がかかるのですから。
「小学校や中学校でやったやろう」と毒づきたくなりましたが。多くの生徒については悲しいほど定着していませんでした。
「小学校や中学校でやったやろう」と毒づきたくなりましたが。多くの生徒については悲しいほど定着していませんでした。
生徒をめぐる環境
昔は、テレビでよく時代劇をやっており、それを見ている生徒も多く、ある程度の歴史的教養や感覚もあったのです。
しかしテレビの歴史番組も減っていき、現在では大河と正月くらい。そもそも、一人一人がテレビを持っていて、年寄りが見る番組なんか見ない。そもそもゲームや携帯が忙しくてテレビもみない。
だから「水戸黄門さん」も「暴れん坊将軍」もポカーン。
信長や秀吉、坂本龍馬なんかも名前は知っていても、「じゃ、何をした人」と聞くと、かなり怪しい。
平清盛とか源義経なんかは「聞いたことがない」という声が帰ってきそう。
そのくせして、「尊敬する人は坂本龍馬」とくるからなかなか立派なものです。
他方、「歴女」や「歴史オタク」もいます。
他方、「歴女」や「歴史オタク」もいます。
授業中継の中でも例をあげましたが、「長宗我部元親」とか「島左近」といったマイナーな人物を知っている生徒がいます。
前田慶次なんて私の知らない(申し訳ない)人物も知っている。ゲームやマンガ、アニメで知っている事が多いみたい。
でもゲームでは、何をしたか、なんてでませんよね。
「歴史的教養」の低下は文化の基盤を揺るがす?!
こんな風に歴史に対する知識の格差は大きくなっています。
多くの生徒の歴史的教養へのレベルは、思っている以上に厳しいと思います。
歴史の知識は文化のベースという面があると思います。
多くの生徒の歴史的教養へのレベルは、思っている以上に厳しいと思います。
歴史の知識は文化のベースという面があると思います。
「歴史の流れ」とか因果関係とか言う以前の問題として、基礎的な事実すらが入っていないのです。
歴史への無知が「日本人がそんなことをするはずがない」という思い込みにつながり、「反知性主義」の基盤になっている、と考えるのはうがちすぎでしょうか。
ともあれ、日本文化の継承という点でも黄色信号が点滅している気がします。
ともあれ、日本文化の継承という点でも黄色信号が点滅している気がします。
たいそうな話をしてしまいました。日本史の授業では、こうした事態にも目を配っていく必要があります。授業中継で、信長・秀吉・家康なんかのプロフィールを話していますが、こうした日本の常識みたいな事も、少しは知っていてほしいなという気持ちからです。
ささやかな取り組み
さて、「時代の順番、特徴、主な人物など常識問題ができていない」という問題はどうするのか。
「しかたない。授業でやろう」などというと、落とし穴に落ちます。でも放置したくない。さっきのたいそうな理由だけでなく、就職試験や公務員試験の常識問題として使われることもあるからです。
「しかたない。授業でやろう」などというと、落とし穴に落ちます。でも放置したくない。さっきのたいそうな理由だけでなく、就職試験や公務員試験の常識問題として使われることもあるからです。
高卒だけでなく大卒ですらも。
だからまったく無視とはいきません。そこで自己満足で、お茶を濁す程度ですが、こんなことをやっています。
授業開きの日、オリエンテーションのあとに、ごく簡単な暗記プリントを渡し、次の時間に簡単なテストをするようにしました。
この程度のものだから、楽勝でできるとおもうでしょう。多くの生徒はそうです。でも、できない生徒はできません。
この程度のものだから、楽勝でできるとおもうでしょう。多くの生徒はそうです。でも、できない生徒はできません。
小学校レベルの歴史知識は絶対に必要
さらに、日本史Bでは、授業を進めるとき、中学校どころか小学校の内容すらが定着していないため、力の差がでやすく、ちんぷんかんぷんになりそうなので、最初の時間に小学生用のプリントに少し中学生の内容を加えた暗記プリントを渡しておき、単元ごとに小テストを行うことにしました。
前任校では高校生用の問題集を使ったのですが、それ以前の問題だとおもったので、こうしたやり方をしました。実際の考査でも、結果的に、このテキスト+小テストの内容が一定数出題されました。
前任校では高校生用の問題集を使ったのですが、それ以前の問題だとおもったので、こうしたやり方をしました。実際の考査でも、結果的に、このテキスト+小テストの内容が一定数出題されました。
追認考査でも
なお、毎年数名不認定になる生徒がいます。そのときはこのテキストから出題するようにしています。このテキスト程度が、日本国民の歴史的教養のミニマムくらいだと思ったからです。
これでもつらい思いをすることが多いのですが。
※暗記プリントを「資料室」のなかにいれてあります。楽勝で満点と思う人も多いと思いますが、実際は(涙)ですよ。