【史料】交詢社私擬憲法案

交詢社私擬憲法案とそれを記載した交詢雑誌。イギリス憲法に範とった私擬憲法。高い完成度を示し、大隈の国会開設案との関係が深い。結論的には正反対ではあるが、形式面では「大綱領」「帝国憲法」の形式に大きな影響を与えたとされる。
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【史料】交詢社私擬憲法案

交詢社
『交詢雑誌』第四十五号 明治十四年四月二十五日
(東京大学法学部明治新聞雑誌文庫蔵)

私擬憲法案

本社社員中ヨリ將來我國ニ制定アリタキ憲法ニ何樣ノ憲法ナルヤ國各固有ノ人情風俗有テ縱令歐米諸邦ノ中制度ノ善美ナルモノ有リト雖トモ之ヲ我國移ストキハ彼善キモ我ニ善カラザル有テー槪ニ範ヲ他ニ求ム可ラサルハ識者ヲ待タスシテ知ル所ナレハ專ラ我國ニ適切ナル憲法ヲ問フトノ質問アリタルヲ以テ之ヲ社員ニ問ハントスルノ際恰モ六七名ノ社員私ニ憲法ニ擬シテ草定セルモノヲ得タレハ雜誌ニ揭ケテ回答ニ換へ且ハ其箇條ニ就キ質疑アラハ其人ニ問フテ説明答辨ヲ得報道スルコトアラントス讀者幸ニ看テ社説視スルコナクンハ幸甚

     編者白

   私擬憲法案緖言

頃日國内至ル所人々國會開設ノ邦國ニ急務ナルヲ説キ開設ノー事ニ至テハ殆卜異義ヲ容ルモノ無キカ如シ然リ而シテ國會開設ノ日如何ノ憲法ヲ制定アランニハ以テ邦國ノ安寧ヲ永遠ニ保持シ其權利ヲ世界ニ伸暢シ得へキヤニ至テハ亦寥々聞ク所無シ蓋シ世間或ハコレアラン然ルモ或ハ之ヲ腦裏ニ藏メ或ハ之ヲ筐底ニ埋ルノミニシテ偶マ之ヲ吐露スルモノト雖トモ一二重要條件ニ就キ其意見ノ一斑ヲ示スニ過キサレハ未タ其全貌ヲ知ルコト能ハス抑憲法ノ事タルヤ至大至重其一字一句ハ皆以テ億兆ノ衆庶休戚ノ由テ生スル所ナレハ輕忽ニ之ヲ言フへカラサルハ固ヨリ論ヲ待タサル所ナリ是レ憲法ノ議論寥々世ニ聞へナキ所以ナランカ余輩亦之ヲ知ラサルニ非スト雖トモ今ヤ黨論未タ分レス心情未タ熱沸セス此際憲法ノ條件ニ就キ虛心平氣互ニ其
意見ヲ吐露シー章ヲ定メー句ヲ作リ以テ國安ヲ保持シ國權ヲ伸暢スルノ方策ヲ論究シ豫メ人心ノ向フ所ヲ定ムルハ今ノ時ヲ措テ亦何レノ日ソ是レ余輩カ輕忽ノ罪ヲ顧ミス私ニ憲法案一篇ヲ擬草シ以テ親友知己ニ頒タントスル所以ノ微意ナリ親友知己幸ニ其謬迷ヲ示シ其缺ヲ補ヒ其剩ヲ刪リ以テ憲法ノ主義ヲ明晰ニシ餘蘊ナキニ至ラシメナハ豈ニ獨リ余輩ノ幸慶而已ナランヤ

                        編者某々記

第一章 皇 權

第一條 天皇ハ宰相並ニ元老院國會院ノ立法兩院ニ依テ國ヲ統治ス
第二條 天皇ハ聖神ニシテ犯ス可ラサルモノトス政務ノ責ハ宰相之ニ當ル
第三條 日本政府ノ歳出入租税國債及諸般ノ法律ハ元老院國會院ニ於テ之ヲ議决シ天皇ノ批准ヲ得テ始テ法律ノ効アリ
第四條 行政ノ權ハ天皇ニ属シ行政官吏ヲシテ法律ニ遵ヒ總テ其事務ヲ執行セシム
第五條 司法ノ權ハ天皇ニ属シ裁判官ヲシテ法律ニ遵ヒ凡テ民事刑事ノ裁判ヲ司ラシム
第六條 天皇ハ法律ヲ布告シ海陸軍ヲ統率シ外國ニ對シ宣戰講和ヲ爲シ條約ヲ結ヒ官職爵位ヲ授ケ勳功ヲ賞シ貨幣ヲ鑄造シ罪犯ヲ宥
恕シ元老院國會院ヲ開閉シ中止シ元老院議員ヲ命シ國會院ヲ解散スルノ特權ヲ有ス但海關稅ヲ更改スルノ條約ハ 預メ之ヲ元老院國會院ノ議ニ附スヘシ
第七條 天皇ハ内閣宰相ヲ置キ萬機ノ政ヲ信任スヘシ

第二章 内閣

第八條 内閣ハ各省長官内閣顧問ヲ以テ之ヲ組成ス
第九條 内閣宰相ハ協同一致シ内外ノ政務ヲ行ヒ連帶シテ其責ニ任スヘシ但シ其事ー宰相ノ處置ニ出テ他ノ宰相ニ關セサルモノハ此
ノ限ニアラス
第十條 内閣中首相一人ヲ置キ上裁ヲ經タル諸法律並ニ政令ハ其名ヲ署シテ之ヲ布告スヘシ
第十一條 内閣ノ議、决定セサルトキハ首相之ヲ决シテ上裁ヲ仰クヲ得ヘシ
第十二條 首相ハ天皇衆庶ノ望ニ依テ親シク之ヲ撰任シ其他ノ宰相ハ首相ノ推薦ニ依テ之ヲ命スヘシ
第十三條 内閣宰相タルモノハ元老議員若シクハ國會議員ニ限ルへシ
第十四條 政府ノ歳入出豫算ノ議案ハ必ス內閣之ヲ起草スヘシ
第十五條 内閣ヨリ出ス所ノ議案ハ先ツ之ヲ國會院ノ議ニ附シ議决ノ後該院之ヲ元老院ニ移シテ其議ニ附スヘシ
第十六條 内閣ハ毎年前年度ノ歳出入計算及其施行シタル事務ノ要
領ヲ元老院國會院ニ報告シ且時々緊要ナル内政外交ノ景况ヲ兩院へ報告スヘシ
第十七條 内閣ノ意見立法兩院ノ衆議卜相合セサルトキハ或ハ内閣宰相其職ヲ辭シ或ハ天皇ノ特權ヲ以テ國會院ヲ解散スルモノトス

第三章元老院

第十八條 元老院ハ國會院卜共ニ政府ノ歳出入租税國債及諸般ノ法律ヲ議决スル所トス
第十九條 元老議員ハ特撰議員卜公撰議員トヨリ成立スルモノトス
第二十條 特撰元老議員ハ皇族華族及嘗テ重要ノ官ニ在リシ者學識アル者ノ中ヨリ天皇之ヲ親撰シ過失アルニ非サレハ終身其職ニ居ルモノトス但其人員ハ元老議員ノ総數三分ノ二ヲ過ク可ラス
第二十一條 公撰元老議員ハ每元老議員撰擧區ヨリ各二人ヲ撰擧シ四年毎ニ改撰スヘシ
第二十二條 各府縣ノ管轄地ヲ以テ元老議員ー撰擧區卜爲シー區内、國會議員撰擧權ヲ有スル者ヲシテ元老議員撰擧人二百名ヲ撰擧セシメ此二百名ノ公選ヲ以テ元老議員各二名ヲ撰擧スヘシ
第二十三條 日本國民ニ生レ年齡滿三十歲以上ノ男子ハ左ニ記載スル者ヲ除クノ外凡ソ何レノ撰擧區ヲ問ハス其被撰候補トナリ元老議員ニ撰擧セラルゝヲ得ヘシ但シ府知事縣令郡區長及元老議員撰擧掛ハ其撰擧區內ニ被撰候補タルヲ得ス

處刑中ノ者
嘗テ重罪ヲ犯シ未タ政權ヲ復セラレサルモノ及身代限ノ處分ヲ受ケ未タ辨償ノ義務ヲ終へサル者
白痴及風癲ヲ病ム者
日本國內ニ住居セサル者
判事及判事補
神官僧侶

第二十四條 元老議員ハ特撰ノモノト雖トモ日本國民ニ生レテ日本國内ニ住居スル者ニシテ皇族ハ年齡滿二十五年其他ハ滿三十年以上ノモノニ限ルヘシ
第二十五條 各省長次官内閣顧問侍從長諸寮長及罷職將官ヲ除キ其他ノ官吏ニシテ特撰若クハ公撰元老議員卜爲ル者ハ其官ヲ辭ス可シ又元老議員ニシテ以上諸官ヲ除キ其他ノ官吏ニ任セラレタル者ハ議員ヲ辭スヘシ
第二十六條 元老院議員タル者ハ其在職中國庫ヨリ每年三千圓ヨリ少カラサル俸給ヲ受クヘシ
第二十七條 元老議員ハ重輕罪ヲ犯シタルニ非サレハ元老院ノ會期中及其前後各三十日間之ヲ拘引スルヲ得ス又其會議中ノ演說言論ハ自力ラ之ヲ出版公布スルニ非サレハ該議院外ニ於テ之ヲ罪スルヲ得ス
第二十八條 元老院ハ國會院ノ彈劾ニ依テ行政及司法官吏ノ國事犯及職務上ノ過失ヲ審問シ出席議員三分ノ二以上ノ同意ニ依テ有罪卜决スレハ奏聞ノ上天皇ノ命ヲ以テ其職ヲ免スヘシ但シ有罪卜决セラレタル者ハ再ヒ他ノ裁判所ニ於テ法律ニ從ヒ之ヲ審問シテ刑罰ニ附スルヲ得ヘシ
第二十九條 元老院ハ詔敕ヲ以テ國會院卜同時ニ於テ之ヲ開閉スへシ
第三十條 元老院ハ四年每ニ其議長副議長ヲ議員中ヨリ公撰シ奏聞ノ上天皇之ヲ命スヘシ
第三十一條 凡ソ事ヲ議决スルニハ出席議員ノ過半數ニ依ル可シ但シ可否數相同シキトキハ議長之ヲ决スヘシ
第三十二條 元老院ハ其議員總數過半ノ同意ヲ以テ其議事規則ヲ議定シ上裁ヲ經テ之ヲ施行スヘシ
第三十三條 元老院ハ其議事規則中ニ相當ノ罰則ヲ設ケテ議事規則ヲ犯シタル議員ヲ罰スルヲ得ヘシ
第三十四條 議事ハ総テ傍聽ヲ許スへシト雖モ議事規則ヲ以テ其數ヲ限リ或ハ臨時ニ之ヲ禁スルヲ得ヘシ
第三十五條 元老院ハ其議員ノ出席全員五分ノーニ滿タサレハ會議ヲ開クヲ得ス
第三十六條 元老院ハ其ノ都合ニヨリ休會ヲ爲スヲ得ヘシト雖モ國會院ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ十日以上ノ休會ヲ爲スヲ得ス
第三十七條 元老院ハ其議事錄ヲ作リテ時々之ヲ印行スヘシ但シ其印行スへカラスト思考スルモノハ此ノ限ニ非ス
第三十八條 本院議决ノ議案ニシテ未タ國會院ノ議决ヲ經サルモノ及國會院ヨリ移シタル議案ニシテ本院ノ脩正ヲ加ヘタルモノハ之
ヲ國會院ニ移シ該院議决ノ後チ兩院議長ヨリ天皇ニ奏聞シテ上裁ヲ仰クヘシ

第四章 國會院

第三十九條 國會院ハ元老院卜共ニ政府ノ歲出入租稅國債及諸般ノ法律ヲ議决スル所トス
第四十條 國會議員ハ全國人民中撰擧權ヲ有スル者ノ公撰スル所ニシテ四年間其職ニ在ルモノトス
第四十一條 國會議員ノ撰擧區ハ各州ヲ以テー區若シクハ數區ニ分チ人口八万人每ニー人ノ割ヲ以テ公撰スルモノトシ八万人ニ滿タサル端數四万人ニ滿ル分ハ同シクー人ヲ公撰シ四万人ニ滿タサル分ハ之ヲ除クヘシ但シー州ヲ成スモノニシテ人口二万ニ滿ル分ハ一人ヲ公撰スヘシ
第四十二條 人口二万人以上ノ都市ハ別ニー選擧區トナシー區二万人以上四万人以下ハ各一人ヲ公選シ四万人以上八万人以下八各二人ヲ公選シ八万人以上ハ六万人ヲ増ス毎ニ各一人ヲ公選スヘシ
第四十三條 國會議員撰擧人名調査ノ期限ニ其撰擧區內ニ於テ郡村ハ地税金五圓以上ヲ納ムへキ土地ヲ所有シ若シクハ價値金二百圓以上ノ所有家屋ニ住居シ人口三千以上ノ都市ハ地稅金三圓以上ヲ納ムへキ土地ヲ所有シ若クハ價値金二百圓以上ノ所有家屋ニ住居シ又ハ價直金四百圓以上ノ家屋ヲ既ニ十ニヶ月借住シテ其年齡滿ニ十一歳ニ達シタル男子ハ左ニ記載スル者ヲ除キ総テ其撰擧區内ノ撰擧人タルノ權ヲ有スヘシ

處刑中ノ者
嘗テ重罪ニ處セラレ未タ政權ヲ復セラレサルモノ及身体限ノ處分ヲ受ケ未タ辨償ノ義務ヲ終へサル者
白痴及風癲ヲ病ム者
日本國內ニ住居セサル者
判事及判事補
府知事縣令及國會議員撰擧掛
神官僧侶

第四十四條 日本國民ニ生レ年齡滿二十五歳以上ノ男子ハ左ニ記載スル者ヲ除クノ外凡ソ何レノ撰擧區ヲ問ハス其被撰候補卜爲リ國會議員ニ撰擧セラルゝヲ得ヘシ但シ府知事縣令郡區長及國會議員撰擧掛ハ其撰擧區內ニ被撰候補タルヲ得ス

處刑中ノ者
甞テ重罪ヲ犯シ未タ政權ヲ復セラレサルモノ及身代限ノ處分ヲ受ケ未タ辨償ノ義務ヲ終へサル者
白痴及風癲ヲ病ム者
日本國内ニ住居セサル者
判事及判事補
神官僧侶

第四十五條 各省長次官內閣顧問侍從長及諸寮長ヲ除キ其他ノ官吏ニシテ國會議員ニ當撰シタル者ハ其官ヲ辭スヘシ又國會議員ニシテ以上ノ諸官ヲ除キ其他ノ官吏ニ任セラレタル者ハ議員ヲ辭スへシ
第四十六條 國會議員ノ中欠員アルトキハ其補欠議員ヲ公選スベシ
第四十七條 國會議員ハ其在職中國庫ヨリ每年三千圓ヨリ少カラサルノ俸給ヲ受クヘシ
第四十八條 國會議員タル者ハ重輕罪ヲ犯シタルニ非ザレハ國會院
會期中及其前後三十日間之ヲ拘引スルヲ得ス又其會議中ノ演説言論ハ自力ラ之ヲ出版公布スルニ非サレハ該議院外ニ於テ之ヲ罪スルヲ得ス
第四十九條 國會院ハ内閣宰相其他行政及司法官吏ノ國事犯及職務上ノ過失ヲ彈劾スルコトヲ得ヘシ
第五十條 総テ租税ニ關スル議案ハ本院若クハ内閣ノ他之ヲ起草ス
ルヲ得ス又其議案ハ元老院ニ於テ之ヲ修正スルコアルモ本院之ヲ再議シ出席議員三分二以上ノ同意ヲ以テ之ヲ决スレハ其决議ノ元老院修正トー致スルト否トヲ問ハス直ニ本院議長ヨリ上裁ヲ仰クヲ得ヘシ
第五十一條 國會院ハ毎年必スー度ノ定期會ヲ開キ事若シ急施ヲ要スルコトハ臨時會ヲ開クコトアルヘシ
第五十二條 國會院ハ第六條ニ依リ之ヲ解散スルコトアルモ解散ノ後九十日以内ニ其議員ヲ改撰シテ會議ヲ開ク可シ
第五十三條 國會議員ノ議長副議長ハ議員中ヨリ公撰シ奏聞ノ上天皇之ヲ命スルモノトス
第五十四條 凡ソ事ヲ議决スルハ出席議員ノ過半數ニ依リ可否ノ數相同シキトキハ議長之ヲ决スヘシ
第五十五條 國會院ハ其議員総數過半ノ同意ヲ以テ其議事規則ヲ議定シ上裁ヲ經テ之ヲ施行スヘシ
第五十六條 國會院ハ其議事規則中ニ相當ノ罰則ヲ設ケテ議事規則ヲ犯シタル議員ヲ罰スルユヲ得ヘシ
第五十七條 國會議員ノ中非法ノ撰擧ヲ受ケ議員トナリタルモノアレハ本院審査シテ之ヲ退クルヲ得ヘシ
第五十ハ條 國會院ハ其議員総數三分ノニ以上ノ同意ヲ以テ議員中罪ヲ犯シテ其体面ヲ辱シメタル者ヲ退職セシムルヲ得へシ
第五十九條 議事ハ總テ傍聽ヲ許スヘシト雖トモ議事規則ヲ以テ其數ヲ限リ或ハ臨時ニ之ヲ禁スルコヲ得ヘシ
第六十條 國會院ハ其議員出席全員五分ノー以上ニ至ラサレハ會議ヲ開クヲ得ス
第六十一條 國會院ハ其都合ニ依テ休會ヲ爲スヲ得へシト雖々元老院ノ承諾ヲ得ルニアラサレハ十日以上ノ休會ヲ爲スヲ得ス
第六十二條 國會院ハ其議事錄ヲ作テ時々之ヲ印行スヘシ但シ其印行スへカラスト思考スルモノハ此限ニアラス
第六十三條 本院議决ノ議案ニシテ元老院ノ議决ヲ經サルモノ及ヒ元老院ヨリ移シタル議案ニシテ本院ノ修正ヲ加へタルモノハ之ヲ元老院ニ移シ該院議决ノ後兩院議長ヨリ天皇ニ奏聞シテ上裁ヲ仰クヘシ

第五章 裁 判

第六十四條 裁判ハ総テ法律ヲ以テ定メタル裁判所ニ於テ法律ニ遵ヒ裁判官之ヲ司ル可シ特別ノ裁判所ヲ開キ特別ノ裁判官ヲ命シテ裁判ヲ司ラシムべカラス
第六十五條 裁判官ハ凡テ天皇ノ命スル所ニシテ過失アルニアラサレハ終身其職ニ在テ其俸給ヲ受クルヲ得ベシ
第六十六條 裁判所ニ於テノ訊問辨論及裁判宣告ハ総テ之ヲ公行スヘシ否ラザレハ裁判ノ効無シ但其事件風俗ヲ壞ルノ恐レアルモノニ限り訊問及ヒ辨論ノ傍聽ヲ禁スルコヲ得べシ
第六十七條 裁判ハ総テ刑事被吿人ヲシテ辨護人ヲ用フルコトヲ得セシムベシ辨護人ヲ許サヾルモノハ裁判ノ効無シ
第六十八條 軍律ヲ犯ス者ハ陸海軍裁判所ニ於テ之ヲ裁判ス可シ

第六章 民 權

第六十九條 日本國民ハ國安ヲ妨害スルニ非サレハ各自所信ノ敎法ヲ奉スルノ自由ヲ有ス
第七十條 日本國民ハ國安ヲ妨害シ若シクハ人ヲ誣謗スルニ非サレハ其意見ヲ演説シ及ヒ出版公布スルノ自由ヲ有ス
第七十一條 日本國民ハ兵器ヲ携スシテ靜穩ニ集會シ又其疾苦ヲ政府ニ訴フルノ權ヲ有ス
第七十二條 日本國民ノ財產所有ノ權ハ决シテ之ヲ侵スヲ得ス若シ公共ノ用ニ供スルコトアルモ相當ノ償ヲナスヘシ
第七十三條 日本國民ハ現行犯罪ヲ除クノ外法律ニ遵テ裁判官ノ發シタル令狀ヲ示スニアラサレハ之ヲ拘引シ若シクハ其家屋ニ侵入シ其物件書類ヲ捜索シ若シクハ之ヲ持去ルへカラス
第七十四條 日本國民ハ拘引ノ後四十八時間ヲ出ズシテ裁判官之ヲ訊問スヘシ若シ其時間ヲ經過シ裁判官令狀ヲ發シテ拘留セシムルニアラサレハ之ヲ釋放スヘシ
第七十五條 日本國民ハ罪狀未决中保証人ヲ設ケ相當ノ保証金ヲ出シテ保釋ヲ受ルヲ得ヘシ但被告人ノ遁逃若クハ罪證ヲ隱滅スルノ恐アルモノハ此限ニアラズ
第七十六條 日本國民ハ拷問ヲ用テ自力ラ其罪ヲ白状セシメラルゝコト無カル可シ
第七十七條 日本國民ハ其族籍爵位ヲ別タズ同一ノ法律ニ依テ其自由權理ノ保護ヲ受ク可シ
第七十八條 既徃ニ溯りテ施行スヘキ法律ハ制定スへカラス但制定ノ法律ニ依テ罪ノ輕减若クハ消滅ス可キモノハ其法律ニ從フへシ

第七章 憲法改正

第七十九條 此憲法ハ元老院國會院各其議員總數三分ノニ以上ノ同意ヲ以テ之ヲ改正シ天皇ノ上裁ヲ仰ク可シ但皇權ニ關スルノ條ハ勅許ヲ得タルノ後ニ非サレハ改正ノ會議ヲ開クヲ得ズ

私擬憲法案畢

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