【史料】雨宮製糸場のストライキ


史料:雨宮製糸場のストライキ
(『山梨日日新聞』1886年(明治19年)6月16日)

<解題>
日本初のストライキとされている山梨県雨宮製糸場の女工ストライキについて調べていたところ、https://www.ritsumei.ac.jp/~satokei/sociallaw/strike.htmlというページに、このストライキについて報じた山梨日日新聞1886年(明治19年)6月16日付の写真が掲載しておられました。
読みにくかったのでテキスト化してみましたが、せっかくなので、写真版と共にアップさせていただきました。
ふりがなの多くは外し、句読点をふり、できる限り現在の文章に近いように加工しています。より正確さを求められるかたは、写真版と照合していただくようお願いします。
ただ「同盟罷業」に「すとらいき」とふりがなを振っているなど、興味深いものです。

上記、HPにより詳しい記事がありますので、ぜひあわせて見ていただければと思います。

 

【史料】

○工女の同盟罷業(すとらいき)

欧米諸国にて役夫職人を過酷に遇する所より、ついに役夫職人社会に同盟罷業のおこなはるることは諸新聞紙上にて見るところなるが、本県下においても現にこの同盟罷業のあらわれたるは甲府山田(やうだ)町、生糸紡績場雨宮喜兵衛方をもって第一とすべし。近来蚕糸業組合規約のことについては、民間実際の取り沙汰いかんは未だくわしく知らざれども、現に生糸工女の頭上にとんだ迷惑を及ぼしたというは、かの組合規則により工女は四時三十分に出場し、退場七時三十分にて、昼食時間三十分をのぞいた所がその労働時間は実に十四時間の多きにおる。さて工女連中、十四時間の労働はさほど苦には思わねど当時は四時三十分にはいまだ夜が充分に明け離れず、多勢呼び伝えて行けばよし、さもなくば厭絶たる行路途中にていかなる悪漢に出会うかも知れず。さりとて夜の明けるを待ち時間がおくれるば、同盟の厳しい御規則で容赦なく賃銭を引き去られ、ことに子持ちの婦人は時間通りに出勤しても二十分賃銭を引き去られ、長糞長小便は申すに及ばず、水一杯さえ飲む隙のないのに工女連中は腹を立て、雇主が同盟規約という酷な規則を設け、妾等も同盟しなければ不利益なり。優勝劣敗の今日においてかかることに躊躇すべからず。先んずれば人を制し、おくれれば人に制せらるる。思ふにどこの工女にも苦情あらんが、苦情の先鞭はこの紡績場よりはじめんといひしものあるやいなや、阿松・阿竹・阿虎・阿梅の面々響きの声に応ずるが如く壕を挙りて、百余名の工女が大袈裟にも同町の寺院に会し二三日前より一大議会を開き、しきりに審議討論中なりといふ。結局いかが成り行くべきやくわしく聞きたる上に記載せんが、工女の不平よりせっかく上繭を得るも、生糸は今年も信州より劣位におるというが如き評を受けざること肝要なれば、何かよい案配に円滑の手段を以て双方を和解せしめたく思うなり。
「(山梨日日新聞1886年(明治19年)6月16日付)」

((https://www.ritsumei.ac.jp/~satokei/sociallaw/strike.html 参照 2023年8月17日))

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